パンドラの箱から飛び出す面白さ!

以前に読んでいた新聞小説の作者で、ぜひほかの作品を読んでみたいと
思っていた人のエッセイを図書館で見つけました

藤本ひとみ著 『パンドラの娘

以前に読んだ新聞小説は、たしかヨーロッパを舞台にした歴史ものだったと
思うんだけど。
今回のエッセイもヨーロッパの歴史にまつわるもの。

そのなかで特に印象に残った部分。
独身の女友達が、
「元彼がストーカーになりそうで怖いから、泊まりに来てほしい」
と連絡してきて、著者が出掛けて行ったときの話。

件の彼女が、
「この間、テレビの実録もので見たやり方なんだけど、元彼を紹介するから
誘惑してくれない?」
などと言いだし、それに対する著者の答えが、
「私はこの年になるまで恋もせず、清く正しく生きてきたの。間違ったことと
いったら、二十歳のときに周囲の要求に屈して結婚したってことだけよ。
すぐ間違いに気付いたけど、責任は自分でとらなきゃいけないと思って、夫に
尽くして今日まで貞淑にすごしてきたのよ。それがどうしてここにきて、あなた
の後始末を引き受けて、好きでもない男を誘惑しなきゃならないわけ?」
というもの。

へえ~。
なんだか興味をそそられる半生ですね
でも、結婚生活にまつわる話はほとんどなし。
最後の方に、結婚させようとする周囲の圧力がどんなふうだったかという
ことが書かれたところもあるけど、そこだけで、あとはどれだけヨーロッパの
歴史が好きかということが綴られていました

この話はまだ続くのだけど、件の彼女が言うには
「男には長くは夢中になれない。ほんとうに夢中になれるのは宝石だけ」
というわけで、総額にしたら時価2億円分くらいのダイヤの原石数個を見せ
てもらうのだけど。

“まさに光の山と言う感じで、圧巻だった。しかし、私は間もなく飽きてし
まった。全部が全部、同じ形で同じ色。動くわけじゃなし、喋るわけじゃなし、
面白くない”
というのが著者の意見。
ふむふむ。私も多分、同じように考えるだろな

著者が興味を持てるとしたら、このダイヤのうちどれかが歴史的に意味があ
る場合。
たとえば、映画『タイタニック』では、ルイ16世の王冠を飾ったブルーダイヤ
モンドという石の行方がストーリーにロマンを添えていましたが、あれは大ブ
ルーダイヤモンド、もしくはホープダイヤモンドと呼ばれ、“王家の呪われた
ダイヤ”と信じられてきたものらしいのですね。そういういわくつきなら俄然
興味が出てくるというのだけど・・・。

そんなことを言っても件の彼女には通用せず、
「最高級のダイヤを、こうやって無造作につかみ上げて遊ぶのが快感なの。
スカッとするからやってごらんなさいよ」
などとすすめてきたので、著者がまねをしてつかみ上げたとたん、慣れない
せいで原石を床にばらまいてしまい、持ち主の彼女がものすごい悲鳴を
上げて、以後、著者は彼女の部屋に出入り禁止となったとのこと(笑)

でもすごいのはここからで、著者は“道を踏み誤るに違いない友達をいさめ
ようと考え”、メールを送りつけたとのこと。
内容はマリー・アントワネットの首飾り事件。
マリー・アントワネット自身はなにも関与していなかったのだけど、普段の
贅沢三昧が仇となり結局は醜聞にまみれてしまい、のちの処刑裁判に大き
な影を落とすことになった、有名なあの事件。

「それもこれも、すべては王妃のダイヤ狂いから始まった。私は心から忠告
する。ダイヤより友人を大切にしなさいよ」

・・・すごい内容。しかも著者はこれできっと彼女も心を入れ替えるだろうと
信じて疑わないのですね

しかし間もなくきた返信メールは。

「冗談じゃないわ。迷惑なだけでクソの役にもたたない友情より、絶対ダイヤ
よ。二度とメールしてこないで」
というもの
で、著者は、あの中のダイヤに呪いをかけて彼女を苦しめ、真実の友情に
目覚めさせるしかないと、日夜、彼女のマンションの方向に向かって呪いの
念を送っているとのこと。

・・・ジョーク半分だとしてもすごい。すごすぎる。著者のパワーに脱帽


あと、著者は幼い頃から騎士になりたかったらしいのですね
騎士に守られるお姫様ではないところが著者らしいけど、悲しいことに日本に
は騎士になるための資格試験とか学校とかがなく、それに近いものといえば
剣士、ひいては宮本武蔵になるのかと思うととてもイヤだったとか。
ロマンティックでないし、きれいでないというのがその理由。

なんかわかる気もしますね。
宮本武蔵というと、身なりとかもあんまり清潔なイメージはないし

で、なんと著者は大人になってから騎士になる夢が叶うのですね。
『ブルゴーニュワインの騎士団』に合格し、フランスのお城で叙任式に出席
したのだけど。
招待状をよく確かめてなくて、いざ現地入りしてからドレスコードがあることに
気づいたのだとか
なんと、ブラックタイ指定
ということは、フルレングスのドレスが必要。
なのに、著者はひざ丈のものしか用意してなかったのだそうな

その夜、世界各地から集まってきたタキシードやドレス姿の人々の中、唯一
足を出した著者はひたすら目立たないように小さくなっているのだけど。
叙任式が始まって一番最初に名前を呼ばれ、段の上に上がるはめに!!

読んでるだけで冷や汗が出てきそうだけど、著者のすごいところは、儀式が
終わって晩餐が始まると、“生きる歓びをかみしめること”という会のモットー
にのっとり、スカート丈のことなど忘れ朝方まで楽しく過ごしたのだとか。

いやー、大物ですね。さすがだ(*^_^*)


他にも面白エピソードがいろいろあり、それらすべてにヨーロッパの歴史が
からんでいて、面白いだけでなく著者の歴史に対する造詣の深さ、趣味の
豊かさがうかがえます。

今度は小説の方にもトライしてみたいなあ(*^_^*)


出版社:講談社
定価:1500円












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この記事へのコメント

2009年07月07日 21:19
この間 このひとの三銃士 上下 読みあげて 面白かった なんか この系が 得意分野見たいですなー
2009年07月07日 23:25
seiziさん、こんばんは
こないだ三銃士を読んだ、って書かれてましたね。
それって、この人の作品でしたか~(*^_^*)
他の小説も面白そうですよね
2009年07月08日 23:24
 昔々読んだリチャード・ブローティガンの『アメリカの鱒釣り』って藤本ひとみさんの翻訳じゃないかと思って調べたら、藤本和子さんでした(^^ゞ。
 この方の本は読んだことがありません。この本、面白そうですね(^^♪。
2009年07月08日 23:38
遊哉さん、こんばんは
おしい!藤本までは合ってたのに(誤爆)
以前に読んだ小説の感じでは、著者は物静かな世界史大好き少女がそのまま大きくなった感じの人なのかなと思ってたんですけどね(^^ゞ
我が道を行くタイプの、個性的で潔い女性ですね。
この本はたまたま図書館で見かけたんですけど。この次は小説をまた読んでみなきゃ(^^♪

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