イギリスの古い怪談はどっしりと重厚でした。
少し前からナイトキャップがわりに読んでいた本がやっと読了しました

「イギリス怪談集」 由良君美 編
イギリスの古い怪談を集めたもので全部で19編が収めてあり、発表の年も
1800年代~1900年代前半と古く、作者もみんな違うのですが、そのなか
で私が唯一知ってた作者はH・G・ウェルズくらいなものでしたね

彼はSF作家だとばかり思ってましたが、怪奇小説も数多く書いているよう
です。
今回収められている彼の作品は「赤の間」という、10ページほどのごく短い
もので、古い屋敷のいわくつきの部屋で若者が好奇心から一晩過ごし、怪奇
体験をするというもの。
これはH・G・ウェルズだからかなり期待して読んだのですが、ストーリーが
ありきたりでちょっと期待はずれでしたね(~_~;)
でもそのほかの作品は、かなり怖いものも、そうでないものも、すごく重厚な
感じがして、怪談を読んでいるというよりはちゃんとした文学作品を読んでいる
ような手ごたえでした。
そのなかでも特に怪談らしくて怖かったのは、「遺言」という作品。
J・S・レファニュという作者の、1868年作のもの。
内容は、一家の主がなくなり、長男と二男が残され、父親のお気に入りだった
二男が家督を継いだことからはじまる怪奇譚。
激高しやすく、暴力的な父と兄弟。
その父親が亡くなってからは次第に家運は傾き、荒れ果てていく屋敷。
自分たちの命をすり減らしながら、いがみあう兄弟。
死してなお館に邪悪な影を落とす父親。
古いイギリス貴族の没落のさまがおどろおどろしく描かれていて、夜中に読ん
でるとほんとにぞっとしましたね(~_~;)
あともう1作、読んでて楽しかったのは「ハマースミス『スペイン人館』事件」と
いう作品。
E&H へロン という作者の、1916年作のもの。
これはなんだかシャーロック・ホームズを彷彿とさせるような作品で、読んでて
とてもわくわくしました(*^_^*)
内容は、親族から「スペイン人館」と呼ばれる館を相続したハウストン大尉が、
館に幽霊が出るという噂が立って困り果て、フラクスマン・ロウという旧友に
手紙を書いて事件解明の手助けを求めるというもの。
ロウからの快諾の返信を読みながら、ハウストン大尉が、学究肌でかつスポー
ツマンであったというロウの秀でた額と長い首、そのせいでひどく細く見える
カラーを思い起こして、微笑の浮かぶのを抑えることができなかった、という
くだりがホームズとワトソンの深い友情を思い起こさせて、なんだかとても楽し
い気持ちになりました。
フラクスマン・ロウこそ、常に自信に満ちあふれ、信頼に足る男だった、とも
書かれてますね

さて、約束の日、二人は久しぶりに「スペイン人館」で出会い、一緒に怪奇
現象に立ち向かっていきますが・・・。
これも、夜中を過ぎても読むのをやめることができなくて、一気に読んでしまった
ほど面白い作品でした(*^_^*)
でも、この作者のE&H へロンという人、作者紹介のところには“略歴不詳”と
あるだけ

この謎も、さらに作品のミステリアスな面白さに花を添える感じでしたね

怪談好きな私としては、ずっとこういう読みごたえのあるものを求めていたので
すが、いかんせん怪談というとただもう幽霊が出てくるだけの薄っぺらいもの
だったりして、単に気持ち悪さが残るだけでがっかりさせられることが多かった
のですが。
今回は時間を忘れて読みふけるほど面白かったです

この手ごたえは、日本の作品でいえば「雨月物語」とかの感じでしょうか。
季節は少しずれてしまいましたが、楽しくぞくぞくする夜を過ごさせていただき
ました(*^_^*)
この記事へのコメント
お化けの出るほうの怪談は苦手ですが
そうじゃないのは読みたいです。
図書館でリクエストしますね。
初めのほう、ウェルズの作品を含めて、ちょっと手ごたえのない話もあったりもしますが、後半に収められてる作品はどれも面白かったです。
古き良きイギリスの雰囲気がどの作品にもあって、とても豊かな気分でしたよ(*^_^*)
そういう所は日本と似てると思います。
ウェルズってSFだけでなく怪奇も書くんですよね。読んだ事無いけど(ー∀ー)
幽霊といえばイギリスですもんね。心霊研究も昔からさかんだし。気候も曇天が多くて、霧深きロンドンというくらいだし。行ったことないけど(ー∀ー)
そう、ウェルズはSFだけではなく、怪奇小説も書くんですよ。・・・って、私も彼の作品はたぶん読んだことないと思います。読んだにしても忘れちゃってるし(爆)