「百物語」




少し前に本屋さんをぶらついていたときに見かけて目をつけていた本があった
のですが

例によって図書館本をたくさん抱えていた上に、少し前に買ってまだ読んで
いない本もあったので、一段落つくまでは買わずにおこうと思い、本屋さんに
行くたびにその存在を確認しては、早く読みたいものだと思っておりました。


手持ちの本にやっとのことで一段落をつけ、手にしたのが、これ(^^ゞ

杉浦日向子著 「百物語」


文庫本ですが、ちょっと驚くくらいの分厚さで、それもまた期待をそそる感じ

全99話すべてがマンガだったせいか、とても読みやすくてあっという間に
読んでしまいました。

もったいないことをしたものです

もっと味わってゆっくり読めばよかったなあ(笑)


内容としては。

あるお屋敷のご隠居さんが、訪れる人に一話ずつ物語をしてもらって百物語を
しようと思い立つのですね。


第一話は、庭木の手入れに来ていた庭師から聞いた話で、『魂を呑む話』

その話というのが、小僧に足腰を揉ませながら昼寝をしていたある殿様が、
ウトウトするうちに口から魂が出ていくのに気付き、はっとつかまえて口に
入れたあとで喉が苦しくなり、湯をもらって人ごごちついたのですが。

その騒ぎの中、部屋の隅で小僧さんがしくしくと泣いていたので、女中が、
「こりゃ おのし 何ぞ いたづらでも しやしまいか」
と問いただしたところ、実は・・・、という話。

これは、怖いというよりは、笑いすらさそうような、しごくのんびりとしたお話
でしたね



ほかの話もおもしろかったのですが。

ひとつだけ、とても印象深かった話を紹介します。

其の八 『異形の家人の話』


吉田某という侍が、いつもどおり役所でお勤めをしていたところ。

暑気あたりか、気分が悪くなって早々に帰宅したのですね。

「気分がすぐれぬ。床をとれ」
と命じながら妻の顔を見たら、なんと牛だったのですね

その妻の傍らにいる若党は蛙で、下女は馬、そしてその下女の抱く我が子は
芋虫。

侍は、刀へ手を掛けたものの、深く息をついて思いとどまります。
なぜなら、異形ではあっても、声や挙措はみんな常のままだったから。

彼は奥へ入り、襖を立て切って横になって目を閉じ、そんな様子を案じて妻が
何度も声を掛けてきたのを叱りつけて、そばへ寄せなかったのですね。

そうしてしばらくの時が経ち、ひぐらしがこおろぎと鳴き替わるころ。

目を開いて部屋から出てみると、夕餉の支度に皆が忙しく立ち働く、いつもの
家内に戻っていたのだとか。


翌日、同僚にこの話をしたところ、はたと膝を打って、こう言ったのですね。

「昨日、門前にて貴公を見かけた折、小さき者を背負っているようであった。
役所に子を伴うはずもなしと、いぶかしく思っていたが、あれは鬼であったの
だろう」


いやあ、早まって抜刀しなくてよかったですよね(~_~;)

暑気あたりは、昔は霍乱(かくらん)と言われていたようですが、文字どおり
“鬼の霍乱”となるところでしたね

この話に付けられていた絵も、
「おかえりなさいませ」
と、首から上が牛そのままの奥方が打ち掛けの裾を引いて出迎え、尋常に
挨拶するところが描かれていて、それがとてもシュールな感じでしたね(^^ゞ


それにしても。

テレビの時代劇などで、殿様が急に乱心して刀を持って暴れまわり、妻や家来
を手当たり次第に切って捨てる、なんていう場面を見たことがありますが。

それも、案外こういうことだったのかもしれませんね(^^ゞ

私もこれからの人生、酷暑の時期に、道を歩く人や家族がヘンな化け物に
見えることがあっても、すぐに抜刀するのではなく、ひとまずは布団にもぐり
こんで睡眠をとってからのことにしよう、と強く心に誓ったのでした(笑)


この作品、こけおどしで底の浅いドロドロした怪談話などひとつもなく、江戸時代
の暮らしに馴染んだ生活感のある話ばかりで興味深く読めました。

マンガも昔風な感じで味があるし、言葉づかいも、わかりにくくならない程度に
昔の言葉が使われていて、それもまた雰囲気作りにひと役かっていた感じ
ですね。


今年の夏は節電が叫ばれているし、寝る前にこんな怪談を読んで涼しくなって
みるのもいいかもしれません(*^_^*)




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杉浦 日向子

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この記事へのコメント

2011年08月01日 20:02
知的なコワさ!
こういうのだったら大丈夫かも?
暑さでうだってる顔が物の怪に見えないよう、最近ちょっとメイクに凝ってるワタシなのした。
キーブー
2011年08月01日 23:05
なおみんさん、こんばんは
おどろおどろしい怖さじゃないので、なおみんさんもきっと楽しんでいただけると思いますよ(*^_^*)
ホント、暑さでメイクが崩れたりしてたら、物の怪と間違われちゃいますもんね(^^ゞ
いきなり切りつけられたりしないよう、用心しなきゃ(^◇^)
ただチャン
2011年08月02日 05:24
おはようございます。
疲れたら睡眠・・休養・・
それが一番ですねf(^_^;
キーブーさんは抜刀なさってたのねぇ(>_<)
2011年08月02日 06:47
江戸時代には、部屋に百本のロウソクを立てて怖い話をして、一話毎に吹き消して行くという集まりが夏の納涼行事として商家などで広く行われていたそうです。
最後の百本目のロウソクを消すと不可思議な出来事が起きるといわれてました。
幽霊が出るとか・・・・人魂が飛ぶとか・・・・

杉浦さんの本はそれを元にしたもので、さすがに江戸に詳しい人の本で面白いですね。
杉浦さんは早くに亡くなられて残念でした。
キーブー
2011年08月02日 17:33
ただチャンさん、こんばんは
疲れたり、あるいはいつも見慣れたものが異形に見えたりしたときなどは、行動を起こすよりも布団にもぐりこむほうがよさそうです(^◇^)
私が武士だったとしたら、すぐに物の怪を成敗!な~んてやっちゃいそう。
んで、朱に染まって倒れる妻や家中の者などを見て呆然とする、というパターンですね(^^ゞ
気を付けよう。。。
キーブー
2011年08月02日 17:40
ねこのひげさん、こんばんは
百物語って、江戸時代の好事家たちが集ってやっていたようですね(^^ゞ
稚気あふれる感じもしますが・・・実際に百話目に何かあったというのも聞いたこともないし(^◇^)
映画もテレビもなかった時代の、楽しみのひとつだったんでしょうね(*^_^*)

杉浦さん、江戸時代に詳しくて、おもしろい作品をたくさん遺されてますよね。
あまりに早くに亡くなられて、ほんとうに残念です。
2011年08月02日 23:44
あ~~ この人の面白いんだよね~
文庫なら旅のお供に買っても良いかな~~♪
2011年08月03日 00:20
杉浦さんの話、分かりやすくてよくテレビで見てました。この人の解説、穏やかでもはっきり言われるので、説明のお手本のような方でした。
本当に江戸をお好きな方だったんでしょうね。早くお亡くなりになられて、、、残念です。
2011年08月03日 08:46
こんにちは♪
 面白、可笑しく読ませて頂きました(^^ゞ
 杉浦さんの本は勿論の事、お話もす好きでしたね~。
亡くなられてほんと残念です。
キーブー
2011年08月03日 17:49
まるおおさん、こんにちは
この作品、マンガになってるから読みやすくて、旅のお供には最適かも♪
あ、でもけっこう分厚いよ。ちょっと重いかもしれないなあ(^^ゞ
キーブー
2011年08月03日 17:52
たかじいさん、こんにちは
テレビで解説のようなこともされてたんですか。それは見逃がしてました。残念です(>_<)
江戸時代に詳しくて、大好きだというのが文章から滲み出てる感じでしたよね
ほかにも、人生相談のような本も出てて、それも味があっておもしろかったです。
亡くなるのが早すぎましたよね。返す返すも残念。。。
キーブー
2011年08月03日 17:54
たあちゃんさん、こんにちは
たあちゃんさんも、杉浦さんのファンでしたか~(*^_^*)
ホント、もっと長生きして、作品をたくさん世に出してほしかったですよね。
この人とナンシー関さんは、あまりにも早すぎる死だったなあ。。。
2011年08月04日 21:26
キーブーさん、こんばんは。
やたら刀を振り回すと銃刀法違反で逮捕されちゃいますよ(^^ゞ
オイラが一番恐かったのはお岩さんですね。惚れた男に裏切られた怨み。
コワイです。((((;゜Д゜)))
キーブー
2011年08月04日 23:02
moumou.h53さん、こんばんは
牡丹灯籠、四谷怪談、番町皿屋敷。これを超えるものはない、と言っても過言ではないですよね。
子どもの頃、夏場に必ずこれらがテレビで放映されていて、心の底から震えあがってたなあ(笑)
大人になると、生きてる人間の方が怖いというのがよくわかりましたけどね(^^ゞ

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