不思議な魅力に満ちた人物でした(^^)



図書館で、妖しい歴史ファンタジー小説を見つけました

手に取って冒頭部分を読み始めるや、もう続きを読まずにはいられなくなった
この作品。

上下ともに堪能させていただきました(^O^)


皆川博子著 妖櫻記(ようおうき)



時は中世、室町時代。

朝廷は南北に別れて争っており、足利幕府の花の御所も内部闘争に明け
くれて、世の中全体が乱れきっていた頃のこと。


雷鳴とどろく豪雨の夜。

野分(のわき)御前という名の まだうら若い女性が、部屋で懐剣を抜き放ち、
ほのかな灯りのもとで かざし見ています。

赤松満祐の館では、6代将軍・足利義教(よしのり)を招いての宴もたけなわ
となっており、野分御前は満祐の側室。

もちろん側室がそのような晴れの席にはべるわけもなく、彼女は離れにある
自分の部屋で静かに座り、先ほど命じたとおりに諜者が獲物を捕まえてくる
のを待っているのですね。


ご寵愛、薄れようはずはない。
女狐めに、殿はたぶらかされておわす。


その女狐の名は、玉琴。

下賤の女でありながら、満祐から玉琴という名を賜り、その身はすでに臨月
を迎えているという情報を、野分御前はすでに得ています。

情報はそれだけではなく、今日この宴のさなかに将軍家を暗殺する陰謀を
満祐が企てていることも、彼女はつかんでいるのですね。

これらの情報は、実家の三条家から付いてきた諜者の兵藤太(ひょうとうだ)
が探ってきたものであり、本来ならすぐに実家に知らせねばならないところ
ですが。

彼女はこの混乱に乗じて玉琴を殺すことを決意し、その拉致を兵藤太に
命じたのですね。


ざんざん降りの雨の中、兵藤太は玉琴を鎧櫃のなかに押し込めて背負って
きます。

「出しや」

野分の命令で、兵藤太が気を失った玉琴を櫃から引っ張り出すのですが。


ちょうどそのとき、母屋では将軍暗殺の騒ぎが始まったようで、馬のいななき
や喚声が聞こえてきて、慌てた侍女が、
「お方様、何やら異変が起こったようでございます」
戸の向こうから呼びかけるのですが。

異変は、これから、ここで起きる。

野分は声に出さずに言い放ち、外の騒ぎもなんのその、締め切った室内で
殺戮を始めるのですね。



長々と書きましたが。

これがこの物語の冒頭部分。

図書館でふとこの本を手に取って読み始め、いきなり心をわしづかみにされ
た場面です。


殺戮には多くは触れられておらず、次の場面では、なますの様に切り刻まれ
虫の息となった玉琴を、野分の命令で再び兵藤太が鎧櫃に入れて背負い、
始末に行くことになるのですが。

野分には無条件で服従する兵藤太も、もともとは優しい男なので、死に瀕した
玉琴の最期の願いである腹の子の命だけは助けてやるのですね。

そこから、物語は幾多の登場人物とともに もつれにもつれていきます。


ちなみに。

この野分御前、すこぶる興味深い人物ではありますが、主人公では
ありません(爆)

南朝の血を引く、阿麻丸という人物が主人公。

そして、先の兵藤太と、百合王というならず者のかしら、南朝のために命を
賭ける楠正秀など、多彩な人物たちが長い年月の間に歴史に翻弄され、
交錯する様子が描かれているのですね。


その時々に、死んだ玉琴の怨念がかいま見えるのですが。

彼女の死霊は、一度だけ霧の中に兵藤太がおぼろげに見ただけのことで、
あとは彼女の遺骨を操って見世物をしていた傀儡(くぐつ)たちが、骨を操る
はずが自分たちが操られて危うく死ぬところだった、などと言いだす場面が
あるのみ。

実際に玉琴が呪っているという確たる証拠はないものの。

読んでいる間ずっと、しっかり彼女の怨念と作為を感じた私でありました(~_~;)


そのせいか野分御前は奇病を病み、長い年月の間、仮死状態になったりも
するのですが。

そのときも、玉琴の死霊を怖がるかと思いきや、
「死者の分際で生者に何ほどのことができようか。このうえ手を出してくる
ようなら、わらわが思い知らせてやる」
と不敵な笑みを浮かべて言い捨てる野分御前。

主人公でもないのに、この人のことばかり書いて恐縮ですが(笑)

この人、脇腹とはいえ、れっきとした公家の三条公冬の娘であり、12歳で
赤松家に側室に出されるまでは深窓の姫育ち。

なのに、この胆力。大胆さ。


もちろん、何の抵抗もできない身重の女性を惨殺するなど、庇いだてしよう
もない所業ではありますが。

彼女は自分の心のまま ある意味まっすぐに生きており、それによって生じる
困難にも果敢に立ち向かっていきます。


読み進むうちに、生きている間にさしたる抵抗もできずにむざむざ死んで
いった身が、死霊となるや陰から糸を引くみたいにして野分に手を出そうと
する玉琴を、潔くないとすら思えて来たり^^;



ああもう、長々と野分御前のことばかり書いちゃって、肝心の主人公・阿麻丸
のことがまるっきり書けませんでしたが(笑)

この阿麻丸も、皇統につながる者としての誇りを持つよう教えられて生きて
きたのに、実際の生活は手元不如意のためそれに見合った格式を保てず、
不安定な気持ちのまま育つうちに、無気力状態になってしまっているのですね。


風前の灯に見える南朝に、未来はあるのか。

阿麻丸は、どのように生きていくのか。


あとは読んでのお楽しみ(爆)

登場人物が多くて、年月も数十年に渡っているため、とてもこのスペースに
手際よく紹介しきれませんでしたが(^^ゞ

興味を持たれた方は、ぜひ手に取ってみてくださいませ。



さて。

個性の強い人物たちの、死に物狂いの生きざまに圧倒された私

部屋に点在する植物たちを愛でて、いつもの自分を取り戻しました(笑)

画像



考えてみればこの登場人物たち、のんびりしたムーミンとは正反対の生き方
の人たちばっかでしたね(^^ゞ




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この記事へのコメント

miyo
2013年02月26日 01:39
キーブーさんお久しぶりーっ(≧∇≦)やっとコメント書ける~。
歴史ファンタジーやホラーは良いよね。私は朝松健さん著の一休シリーズが好きなのだ(^w^)何だろう、日本の歴史にホラーの創作ってのが風情があって(笑)方言で書かれた書籍も身悶えする程のめり込む質で(爆)岩井志麻子さんの岡山弁の書籍は大好きで堪らないです。この作家さんの名前何だか覚えがあるような…もしかしたら気になって手にした本かな?
2013年02月26日 06:10
これは依然読みましたが、『里見八犬伝』的なオドロオドロな原色の世界ですね。
オドロオドロしていても現代ものより歴史物のほうがいいですね。
半村良さんの『産霊山秘録』の系列ですね。
あれもよかった。
2013年02月26日 13:06
女の怨念の話しかいと思いつつ最後まで読んでしまいましたよ私の姉も話が上手で、怖い話しを最後まで引き込まれて聞かされたことを思い出しましたずっと昔のことですが、女の人見 憲紀は話しがうまいなあ(笑)
ひまわり
2013年02月26日 13:49
室町時代は好きですね。
歴史には疎いですけどね^^;
皆川博子さんは一度読んでみたかった
ので探してみます。
キーブー
2013年02月26日 22:38
miyoさん、おひさ~~!(^◇^)
いろいろと大変だったようだけど、なんとか落ち着いたのかな?
朝松健さん著の一休シリーズ。それは私は読んだことないなあ。探してみようっとφ(..)メモメモ
私は歴史ものと、ホラーとファンタジーが好きなので、その三つが混然一体となったこういう作品は大好物なんだよね(笑)
岩井志麻子さんかあ。
彼女は、書くものもすごいけど、ご本人もすごいインパクトだよね(^^ゞ
んで、彼女のエッセイのセキララなこと(笑)
あれだけさらけ出せる度胸があるというのも、すごいですよね(^^ゞ
キーブー
2013年02月26日 22:41
ねこのひげさん、こんばんは
はい。作者も“『里見八犬伝』的な世界”だとおっしゃってました
半村良さんの『産霊山秘録』ですか。それは読んだことないです。探してみなきゃφ(..)メモメモ
オドロオドロの世界は、現代よりも歴史ものの方が面白いと私も思います(*^_^*)
キーブー
2013年02月26日 22:45
サヤ侍さん、こんばんは
女の怨念だけの話ではないのですが、でもこれがカギであることはたしかですね。
お姉さま、お話上手でしたか~(*^_^*)
“女の人見憲紀”って、意味がよくわからなかったのですが・・・女の人はみんな話がうまい、ってことですよね 私のなかで、そう変換しておきます(笑)
キーブー
2013年02月26日 22:48
ひまわりさん、こんばんは
私は室町時代より、鎌倉時代の方が好きかなあ
赤松満祐に暗殺された将軍の跡を継ぐのが、義政なのだとか。正室はあの守銭奴の日野富子ですよね。なんだか好きになれない時代だなあ(笑)
2013年02月27日 00:00
彼女の家系がすごいわよね。
キーブーさん、赤江瀑の本を読んだことありますか?
2013年02月27日 07:52
わはは そうか主人公ではないのか^^
鬼のようだけど 確かに強いっ!!
キーブー
2013年02月27日 17:11
もうヘトヘトさん、こんにちは
赤江瀑ですか。読んだことないです^^;
これも、探してみますね。
それにしてもみなさん、いろいろと読んでおられるなあ(^^ゞ
キーブー
2013年02月27日 17:13
まるおおさん、こんにちは
うん。重要人物のひとりではあるけれど、主人公ではないんだよね(^^ゞ
そう。鬼のようなんだけど、彼女なりの筋の通った生き方をしてる感じ。周りは大変だけどね(笑)

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