『鳥辺野にて』



図書館で、またまた面白そうな本を見つけました

加門七海 著  『鳥辺野にて』


横に かしいだ枯れ木が不気味でおどろおどろしい雰囲気を醸し出している
表紙には、「あの世などない あの世などない」の文字が

期待に胸をワクワクさせながら、借りてまいりましたよ~



著者の加門七海さんといえば、ホラー好きのあいだではとても有名な作家で、
たまたま私が持っているホラーマンガエッセイにも、彼女は実名で登場して
いるほどです。

この本の後書きでも、民俗学者の方が、
「この本は流行のホラー小説、といってすますわけにはいかない。
かの『日本霊異記(りょういき)』に匹敵するものがたり集なのである」
と書かれていますが。

まったくもってそうだと私も思います。

軽めの、ぜんぜん怖くないホラー小説が巷にあふれておりますが、ああいう
ものとは一線を画した、すぐれたものがたり集であるといえましょう



ここに おさめられている ものがたりは、表題作の『鳥辺野にて』をはじめと
して、『赤い木馬 』『おとむらい』 『左右衛門の夜』 『墨円』 『菊屋橋』 『阿房宮』
『あづさ弓』 『朱の盃』 『鉢の木』 『抱擁する山』の全11作品。

時代背景もさまざまだし、怖いなかにも なんとなくほっこりする話や、
幻想的でうっとりする話などもあり、べったりしたホラー臭がなくて、とても
読み応えのある作品でありました


まずは、表題作の『鳥辺野にて』から。

かの有名な葬送地・鳥辺野に、死に瀕した白髪の老人が打ち捨てられ、
横たわっているところから話は始まります。

だんだんに夕闇が迫ってきて、あたりに瘴気が たちこめてきているかのよう
なものすごい光景のなか、横たわる老人はまだ息があるようで、しきりに、
「あの世などない、あの世などない」
と呟いているのですね。

そこへ、青年がひとり、ふらりとやってくるのですが。

「妙な唱え言が聞こえてくるから、何かと思えば・・・オヤ、粟田口の藤太じゃ」
と、老人に声を掛けます。


実はこの老人は数十人の手下を抱える盗人で、以前にこの青年・小切丸も
その仕事を手伝ったことがあったのですね。

今夕、小切丸がここにいたのは、鳥辺野の遺体から着物や金になりそうな
小物を剥いで売るためだったのですが。

そこで偶然にも、かの大悪人・粟田口の藤太に出会ったというわけなの
ですね。


藤太は、これまでに数えきれない人を手に掛け、極悪非道の限りを尽くして
生きてきたのですが。

そんな彼も、病を得てはどうにもならず、まだ息があるというのに無残にも
鳥辺野に捨てられてしまっているのですね。

どうやら、藤太はこれまでの己が悪行のせいで死んでのち地獄落ちになる
のを心底恐れているようで、熱に浮かされているせいもあって、ずっと「あの
世などない」と自分に言いきかせるかのようにうわごとを言っているのですが。


小雨の降る鳥辺野の日暮れは思いもかけず早くて、死にかけている藤太と
話しているうちにあたりはうす暗くなってしまい、鳥辺野を出ないうちに日が
暮れてしまってはかえって危険なため、小切丸はここで夜明かしする決心を
するのですが。


小切丸は 怯えている藤太の様子を見てせせら笑い、あまつさえ、彼の死ぬ
のを待ってはいられないとばかりに倒れている藤太を棒で打ち据え、殺して
しまいます。

そして、彼の着物を剥いでしまうのですね。


そんなことをしているあいだも、周囲はケモノたちが徘徊する物音がしたり、
鬼火がゆらゆら飛んだりなど、ものすごいありさまなのですが。

小切丸はそれを見ても恐れる様子もなく、腰を下ろして、戦利品を大事に
抱えて ただ夜が明けるのをじっと待っているのですね。


いやはや、すさまじい光景でありますね。


藤太のこれまでの人生も、またその死にざまも もの凄いですが、その藤太
ほどの悪党でもないはずの小切丸の、この心のすさみ方も背筋が寒くなる
ほどです。

そして、おおかたの予想どおり。
死んだばかりの藤太が、生前の姿のまま、ゆらりと化けて出るのですが


「ぬしが見据えるのは儂ではないぞ。さあ、どうじゃ。あの世はあるのか!」
小切丸は そう叫んで仁王立ちとなり、藤太の亡霊と対峙するのですね。

す、すごすぎる

普通、自分が今しがた殺したばかりの男が幽霊になって出てくれば、腰を
抜かしそうなものでありますが。

恐怖のかけらすら感じることなく、仁王立ちになって幽霊と対峙するとは。


さて、そんな小切丸ですが。

数刻ののちには、手にしていた戦利品をすべて投げ捨てて、その足で寺に
入って出家してしまいます。


いったい小切丸に何があったのか。

ヒントを出すとすれば、何かがあったのは小切丸にではなくて、化けて出た
藤太の方なのですが(笑)


読み終わった後、思わず、
「は~~っ」
と息を吐いたほど、のめりこんで読んでおりましたよ^^;



そのほかのお話も、全部ハズレがなくて とても面白かったですが。

なかでも私の印象に残ったのは『菊屋橋』という話。

ときは、江戸時代。

町内で評判の器量良しである、仲よし4人組の少女の、少しほろ苦くも
かわいそうなお話なのですが。

16、7歳の、まだ幼顔の残っている少女たちは、みなで仲良く仕立てを習って
いるのですが、手を動かすよりはお喋りに興じる時間が長くなりがちの、
かわいい年頃。

毎日をそうやって、楽しく過ごしていたのですね


そんなある日、そのうちのひとりが、不思議な占いの話を聞きこんできます。

何か聞きたいこと、知りたいことがある場合、手鏡を胸に抱いて菊屋橋の
たもとに立つと、向こうから渡ってくるふたり連れ、三人連れの人たちの
お喋りのなかにその答えがある、というもの。


ちょうどその頃、4人の娘のうちのひとりには、縁談が来ていたのですが。

彼女はその話にいまひとつ気がすすまなくて、気分がふさぎがちだったの
ですね。

なので、その占いをやってみようと思い立つのですが。。。


誰が悪いというわけでもないのに、どんどん状況がこじれていって、良くない
方向へ転がっていってしまうこのお話。

読み終わった後、やっぱり、
「は~~っ」
と息を吐いておりました(笑)



長々と書きましたが。

どのお話も、読後感はさっぱりとしていてベタつく恐怖がなくて、とても
よかったです。

興味のある方は、ぜひご一読くださいませ。





最後に。

今日のお弁当です(*^_^*)

画像



前日の晩ごはんのおでんがメインの、究極の手抜き弁当(笑)

まあ一応、ホウレンソウを茹でておひたしを作り、ふりかけは2種類に
しましたけどね(^O^)


今日は汁ものが欲しいということで、これとミニカップの天ぷらそばを
一緒に持っていってます。


若い人は、すごい食欲ですね



鳥辺野にて (光文社文庫)
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加門 七海

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この記事へのコメント

2015年05月30日 00:58
確信したわ
絶対、お岩さんが恐いというのはうそでしょ
可愛いっ子ぶりしてもダメ
すぐわかるじゃない
お弁当は、おいしそう
こぶたちゃん達、いいわね
2015年05月30日 15:03
お弁当で オデンタベラレルナンテ いえっーいですよ
キーブー
2015年05月30日 16:45
もうヘトヘトさん、こんにちは
あらっ☆ ぶりっ子、バレちゃいました?(^O^)
・・・って、ちゃうちゃう~!
何度も言いますが、番町皿屋敷の恐怖は ケタはずれです。このようなフィクションの小説の比ではありません。
それはもう、有名な話があちこちにありますから。。。
おでん弁当、見かけの地味さのわりにおいしいんですよ
こぶたたちの評判は、上々でありました(*^_^*)
キーブー
2015年05月30日 16:47
seiziさん、こんにちは
わが家のおでんは、汁まで飲める薄味の京風おでんです
辛口批評家のこぶた2号も、おでんだけは、わが家のよりおいしいのを食べたことないって言うんですよ
ひまわり
2015年05月30日 17:36
私は悪鬼羅刹が怖いですねー。
ホラーファンタジーは読みますね。
恒川光太郎とか乙一とか。
キーブーさんの
おでんの玉子たべたいな~


キーブー
2015年05月31日 14:40
ひまわりさん、こんにちは
魔物も怖いですが、よく言われることだけど 生きてる人間も怖いですよね。悪意や、妬み嫉みで心がいっぱいになってる人とか(~_~;)
恒川光太郎や乙一とか、まだ読んだことないです。機会があったら読んでみたいとは思っているのですが。
おでんの玉子、私はあまり好きじゃないのですが、こぶたたちが好物なもんで、いつも5~6個は入れてます
2015年05月31日 21:46
日本のものって、本当に怖いですよね。
心理的に怖いというか。。。。
気にはなるけど、ちょっと躊躇中。
おでんおいしそうです。
おでんもお弁当に入れるって私には発想がありませんでしたorz
ひまわり
2015年06月01日 13:50
確かにそうですよね。
一番怖いのは人間かも知れませんね。

恒川光太郎では「夜市」が一押しです。
機会があればぜひ!

キーブー
2015年06月01日 21:41
ミルテさん、こんばんは
怪談は、日本のものが いちばん怖いと私も思います。そう、心底ゾッとする感じなんですよね(~_~;)
おでんは、汁さえちゃんと切れば、味もしみてるし お弁当に最適だと思いますよ。一度お試しあれ(^O^)
キーブー
2015年06月01日 21:47
ひまわりさん、こんばんは
再度のお越し、歓迎いたします(^O^)
年を取るにつれ、人の悪意ほど始末におえないものはないなあと思うようになりました。残りの人生、もうあまりそういうものには近づきたくないなあ、なんて思ったり^^;
「夜市」、いちど図書館の棚で見かけたんですよね。
1~2ページ読んでみて、よっぽど借りて帰ろうかと思ったのですが・・・いかんせん、重くて持ちきれないので諦めたのでありました。次回、また逢えたら、今度はちゃんと借りたいと思います

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