田辺聖子を偲ぶ。



つい先日、作家の田辺聖子の訃報が入ってましたね。

驚くと同時に、自分の中で一時代が終わったというか、区切りがついたような、
なんだかとても寂しい気持ちになりました。


あえて敬称を付けないのは、すごく尊敬していて 大好きな作家だから。

ほら、歴史に残るような有名人には敬称はつけないでしょう?


彼女は、私にとって歴史上の有名人と同じくらいの重きがある すごい人なので
あります




この人のエッセイは、ほぼすべて読んでおります。

一番好きなのは、ご主人のカモカのおっちゃんとの丁々発止のやり取りが
楽しい 『女の長風呂』 などのシリーズ。

日々の生活を楽しんでいる感じがすごく伝わってきます(*^_^*)


作家と主婦業の両方を こなしていた彼女ですが、午後6時になると どんなに
仕事が詰まっていても ぴたりとペンをおき、台所に立つんですよね。


厚揚げの焼いたのとか煮物などの ごく家庭的なおかずをこしらえ、晩酌の
用意をして ご主人を待つのですね。


開業医のご主人が仕事を終えて階段を上がってくるスリッパの音を聞くと、
今でも とても嬉しくなる、って書かれていたのが印象的でありました



その生活ぶりは、昔NHKの朝ドラになったこともあって、ご存じの方も多いかと
思います。


彼女が嫁いだのは神戸の下町の小さな古い医院で、診察室にある綿花の
入ったガラス瓶のフタには 『ふきわた』 とひらがなで、ご主人のヘタクソな字
で書かれていた、なんていうエピソードも心に残っています。


そういうのだけを読んでいると、毎日 何の悩みもなく楽しく暮らしていたように
見えるのだけど。


彼女は若いときに父親を亡くしていて、その後は事務員として母と弟との生活
を支えていた時期もあり、結婚も、当時としてはかなり遅い30代の終わりごろ
なんですよね。


ご主人は先妻を亡くして4人の子持ちで、両親と未婚の妹もおり・・・なかなか
に難しい状況だったと思われます。


実際、エッセイにも、義妹が、
「姉ちゃんは この店で子どもたちの下着を買うてはった、○○は この店で
買うてはった」
という感じで、何かにつけて亡くなった前妻のやり方に倣うように言われた、
とさらっと書かれておりましたが。


それを読んだときは、もちろん義妹には何の悪意もなかったんでしょうけど、
嫁いで行った身には なかなかにしんどいことであったろうなあ、って思った
ことでありました。



また、奄美の出身であったご主人の家では、上の男の子ふたりが それぞれ
下の妹たちを あごでこき使うような風習もあり、それは断固としてやめさせた、
という話も印象的だったし。

いろいろと しんどいことや大変なこともあったんだろうなと思われるのに、
エッセイの筆致は あくまで軽妙で温かく、彼女の人間の大きさがしのばれる
ような文章だったんですよね。



歳を重ねてもかわいいものや美しいものが大好きで、それらに囲まれる
ようにして暮らしておられたのもつとに有名ですよね。


それを少女趣味だとか なんだとか言って貶めるような人にも、むきになって
反論したりもされなかったし。


結婚するときも、当時としては遅い結婚にたいして、周囲のイジワルな人に
「茶飲み友達を見つけはった」
なんて言われたそうだけど

でも、そんなことを言う人たちにかぎって、さも結婚がまずそうな、苦虫を
かみつぶしたような顔で日々を生きているのが不思議、なんて書かれていた
のも面白かったです



エッセイだけではなくて、小説も味わい深いものが多かったです。


年の締まった女の子の 心の機微を描いた 『愛の幻滅』 や、古事記の世界の
華麗な物語である 『隼別王子の叛乱』 など、読後20年を越える今でも、
心に圧倒的な印象を残しております(*^_^*)




わが家のささやかな本棚には、彼女の本が たくさん並んでおります。

これから寝る前にでも、時間をかけて ゆっくりと読みなおしていこうと思って
おります


それはたんに読書するというだけのことではなくて、その本を読んだ当時の
自分と再会することでもあり、その後の自分の軌跡をたどることでもあるん
ですよね。


そんなことができる作家というのは、私のなかでは ごく少数。


彼女の作品と出会えたことは、とても幸運なことだったと思います。




最後になりましたが。

心から お礼を申し上げるとともに、ご冥福をお祈りいたします。




ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 13

なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス

この記事へのコメント

2019年06月16日 06:36
目から うろこ 豊臣秀吉さんとは 言わない
キーブー
2019年06月16日 21:43
seiziさん、こんばんは
はい、徳川家康さんも、織田信長さんも言いませんよね(^O^)
2019年06月16日 22:24
名前は聞いた事ありますが、殆ど
知らない(^_^;)
キーブーさんの記事読んで、興味が
湧いてきましたよ。
今度図書館に行ったら(年に数回(^_^;))
探してみよう。
2019年06月16日 22:44
まぁ、ちっとも知りませんでした。
ちょうど、「花衣ぬぐやまつわる わが愛の杉田久女」を読み終えたばかりなんですよ。ほんとに、人情の機微というか、人の気持ちや人柄を察するに厚い作家さんだなぁ、と思っておりました。
ご冥福をお祈りいたします。
2019年06月17日 01:07
女の長風呂
随分前に読んだことがあります
生活感が等身大
そんなところがとっても好感
そんな作品が多い印象があります

ちょっとご無沙汰してるのでもう一度読んでみようかなと…
2019年06月17日 14:11
私は、キーブーさんほど読んではおりませんが、それでもカモカのおっちゃんとの丁々発止のやり取りなどを書いたエッセイは、いくつか読み、ハマっておりました。
だから、訃報をニュースで知った時、思わず「えっ」と声を出しておりました。
昭和の庶民の暮らしが滲み出てくるような作品は好きです。
向田邦子、有吉佐和子、山崎豊子など、好きな女流作家の方々以来の喪失感です。
何度読んでも良いものは良いですね。私も読み返したいと思います。
2019年06月17日 15:20
田辺聖子女史は読んだことがありませんが
確か スヌーピーが大好きな人だったような
テレビで誰かと対談していて
グッズをプレゼントされて
マジ喜んだ笑顔が 思い出されます。
 合掌
キーブー
2019年06月17日 22:43
りーにんさん、こんばんは
彼女は多作なので、図書館には たくさんあると思いますよ
小説もいいけど、エッセイが とびきり面白いです。おススメですね(^O^)
キーブー
2019年06月17日 22:50
毎日ばらいろさん、こんばんは
「花衣ぬぐやまつわる わが愛の杉田久女」 も、わが家の本棚にあります
人の心の微妙な動きなど、鋭くとらえてますよね。歴史ものも現代ものも、どちらも面白いです。
ご主人のカモカのおっちゃんを見送ってから 逝かれましたね。ご主人、この人と生活してて楽しかっただろうなあ、って思いました。よいご夫婦でしたよね。
キーブー
2019年06月17日 22:54
らん太郎。さん、こんばんは

>生活感が等身大

そうなんですよね。
毎日の夫婦の晩酌でも、気張ったごちそうではなくて、日々の食べ慣れた惣菜を手作りしていたり。
そんで毎日のように ふたりして飲んで食べてお喋りして。いいなあ(*^_^*)

『女の長風呂』シリーズは、寝しなに読むのに ぴったりですよね。
面白くてほっこりして、いい気分で眠りにつけそうです
キーブー
2019年06月17日 23:01
yu_mama さん、こんばんは
はい、私も ニュースで訃報が流れたときは思わず 「えっ、ウソ!」 って声に出ておりました。
ご高齢なのはわかってたけど、やっぱりショックでしたね。

>向田邦子、有吉佐和子、山崎豊子

向田邦子はまた、エッセイは達人って感じですよね。脚本ももちろんだけど。たぶん わが家に ほぼ全部揃ってると思います。
山崎豊子は、いちおう いくつか読みましたけど・・エッセイは知らないけど、小説は けっこう往生したかな(笑)
なんか、男性作家の作品のような気がしました。心の機微よりも出来事を冷徹に追ってる感じなのかな?^^;

キーブー
2019年06月17日 23:04
└|∵|┐高忠┌|∵|┘さん、こんばんは
そう、スヌーピー、大好きだったみたいですね。
なんにしろ、美しいものや かわいいものが大好きで、引っ越しのときは ドールハウスの小さな小さなメガネなど、失くさないようにとハラハラしておられたし
宝塚歌劇のファンとしても有名でしたよね
2019年06月18日 14:03
田辺聖子さんて私読んだことはないですが、歴史上の偉人という感動をキーブーさんに与えたのですから持っていたんでしょうね。キーブーさんのブログが読みやすいのはひょっとすると田辺聖子さんの影響?
音楽と文学は苦手で生きて来ちゃいました。でも万葉集なんかには感動していたのですよ。「春はあけぼの云々」みたいな日記物や物語も好きだったから、現代ものが苦手なのかも知れませんね。若い頃から爺さんだったのかも
2019年06月19日 15:31
こんにちは
田辺聖子さんの訃報
力を入れずに読める。
良い作家さんでした(過去形)
ご冥福をお祈りいたします
キーブー
2019年06月20日 00:00
サヤ侍さん、こんばんは
田辺聖子、佐藤愛子のふたりは、私にとっては両巨頭といった感じです。エッセイも小説も面白いし、それぞれに違えど その生き方もすごく共感できるし。

日記って、古代の人のも現代のも、なんだか とても面白いですよね。私も けっこう好きで読んでおります
私も 若いころから婆さんだったのかも
キーブー
2019年06月20日 00:05
もうヘトヘトさん、こんばんは
ホントホント。力まずに書かれている感じで、こちらも肩の力を抜いて読めましたよね。
彼女の心の広さと温かさが 随所に滲み出ているような文章でした(*^_^*)
ほんとうに良い作家さんで、佐藤愛子のように、年を取ってからの境地もエッセイで著してくれると嬉しいのに、っていつも思っていたのだけど。。。
残念だけど、今ごろはまた カモカのおっちゃんと天国で酒を酌み交わしておられるのかな

この記事へのトラックバック