ノラネコ日記



こないだ図書館に行ったとき、ふてぶてしい面構えのノラネコたちの絵が
ふと目について、吸い寄せられるようにして手に取った本がこれ

新藤兼人著  「ノラネコ日記」 -乙羽さんとドブ君たちー

新藤兼人監督が、家にやってくるノラネコたちとの触れ合いを、今は亡き
奥さまの乙羽信子さんとの思い出なども織り交ぜながらエッセイにしたもの。


独特の絵も、監督自身が描かれたものだとか。

いわゆるかわいいネコちゃんの絵ではなく、海千山千の、眼光鋭いノラの
雰囲気がとてもよく出ていると思います。


夫婦が住む赤坂のマンションの庭にやってくる数匹のノラネコに餌をやるよう
になってから、馴れてきてはいてもさすがにそこはノラネコで、乙羽さんが缶詰
の中身をエサ箱にあけるのにもたもたしていると、1匹のネコがさっと稲妻の
ごとく手を伸ばしてひっかいたことがあったそうな。

「まあ、失礼ね、毎日あげているのに」
と乙羽さんが叱ったのを見ていた監督は、それがノラ根性であり、自分が
それに共鳴するのは長年独立プロをやってきて、自由のきびしさを身を以て
体験しているからだ、と言ったところ。

「でもネコは映画なんか作っちゃいないんだから、ネコのほうが楽だわ」
と乙羽さんはきっぱりおっしゃったそうな(^^ゞ

それを聞いて監督はなるほど、と思い、ネコは映画は作らないが、しかし
すべての生きものには理想があるはずだ。ノラネコよ、おまえの理想はなんだ、
などと考えたり。

老境に入った夫婦の、落ち着いた仲の良さがよく伝わってきますよね(*^_^*)


乙羽さん亡きあと、いつもと変わらず餌をもらいにやってきたネコたちに、
「乙羽さんはもういないよ」
といっても、ニャーと鳴くだけ。

ふたりで”ドブ君”と名付けたネコも、乙羽さんの膝には乗っていたのに自分の
膝には乗ろうとしないのを見て、
「ドブ君、乙羽さんがいなくては、君はおもしろくないらしいけど、ぼくも
おもしろくはないよ」
と監督が話しかけたときも、ニャーと鳴いたそうな。

どんな言葉を並べるよりも、このエピソードが監督の悲しみを如実に語って
いるような気がしました。


私は、今まで犬は飼ったことがありますがネコは飼ったことがないし、あまつ
さえ、小学生のときにお祭りで買ってもらって大事に育てていた色つきひよこ
や文鳥を何度か捕られてしまったことがあり、ネコにはあまりいい思い出が
ないんですよね(~_~;)

でも、この家に越してきた当時、この界隈はノラネコが多くて、ちょっとすれ違い
ざまに、
「おはよう」「なにしてんの?」
などと声をかけてやると、何度目かには向こうの方から、ニャー、と声をかけて
くれるようにもなって、ちょっと嬉しかったです。

越してきて1ヶ月もたたないころ、何度か声をかけたネコたちのうちの1匹だと
思うのですが、早朝にドアを開けたところ、いきなり真っ白のネコが飛び込んで
きたことがありました。

狭い廊下を、私の脇をすりぬけて走って部屋に入ってきたのですが、その
ときに私の足を踏んづけたらしく、足の甲に爪の痕とおぼしき傷が残って
いましたね

まだ寝ていたこぶた2号の布団を踏んで、奥のカーテンのところで止まった
ので抱き上げてみたら、真っ白ふわふわの長い毛足のせいで大きく見えて
いるだけだと思っていたそのネコは、かなりずっしり重かったですね(~_~;)

「重っ。ノラのくせに何食べてんの?」
と言いつつ、玄関から外に出したら、それでも足をすりぬけて入ってこようと
したりして、てこずりましたが。

どうやってもダメだとわかったらしく、もうやってくることはありませんでしたね。

あとで見てみたら、こぶた2号のシーツに小さなネコの足跡がついていて、
なんだかかわいらしくてしばらくこぶた2号と見入ったりしておりました(笑)

足の甲に残った小さな傷も、こぶた2号が、
「ネコに足を踏まれたなんて話、聞いたことないわ」
などと言って後々まで笑ってたっけ(~_~;)


私のネコについての思い出といえばそのくらいのものですが。

ついこないだ、買いもの途中におもしろい光景に出くわしました。

ある家の玄関の前にノラネコが4匹、行儀よく座りこみ、
「ニャー、ニャー」
と鳴いていたのですが、その様子が普通にその家を訪れた客のようで、見て
いてとてもおもしろかったです。

しかも、あまり大きな声で騒いではいけない、というのをちゃんと認識している
ようで、遠慮がちに鳴いているところが妙に人間っぽくて笑えましたね。

立ち止まって笑っている私の方も気にしいしい、細い声で、
「あの~・・・すいません・・・奥さん・・・いらっしゃいませんか・・・?」
なんて言ってるようで、おもしろい光景でした(^o^)


ネコって、きっと深く付き合うととてもおもしろいのだろうなと最近は思いますが。

あれだけいた近所のノラネコも、最近はあまり見かけなくなりましたね。

あのネコちゃんたち、今はどうしているのかなあ。




ノラネコ日記―乙羽さんとドブ君たち
彌生書房
新藤 兼人

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