『のぼうの城』




図書館で、またまた面白い本と出会いました

和田竜 著  『のぼうの城』


だいぶ前に話題になり映画化もされた作品で、今さらといった感じですが(笑)

話題になっていたときはなぜだか手が出なかったくせに、図書館の“本日の
返却本”の棚にぽつねんと置かれているのを見て、急に読みたくなったん
ですよね(笑)



物語は、織田信長亡きあと、豊臣秀吉が日の出の勢いで天下を平定して
いた頃のこと。


名だたる武将のほとんどを屈服させた秀吉ですが、小田原の北条氏だけが
頑としてその傘下に下ろうとしなかったため、北条氏討伐の軍を出すのですが。

本城の小田原城を落とす前に、いくつかある支城のひとつ、忍城(おしじょう)
を攻める総大将に、若き日の石田三成を指名します。

このいくさが、頭脳派で希代の策士ともいわれた彼の初陣であり、かつまた
生涯の汚点ともなる手痛い敗北を喫するいくさとなるのですね。


忍城の当主、成田氏長は、主筋の北条氏から加勢するよう命を受け、
小田原城に入りますが。

その時点ですでに彼は、豊臣方へ内通しています。

時世の流れを見ても、それは妥当というか、致し方ないことであったのですね。



当主が留守となった忍城は、城代が留守居役となって守ることになりますが。

当主・氏長の叔父である城代が急な病で死の床についてしまい、その息子、
すなわち氏長のいとこにあたる成田長親がその任にあたることになります。

その長親が、主人公である“のぼう様”なのですね。


最初、この“のぼう”の意味がわからなくて、それも、この本に食指が
のびなかった理由のひとつなのですが(笑)

これ、“でく”が省略されていたのですね(爆)

そう、でくのぼう様、という意味(^O^)


さすがに当主のご連枝ということで、あからさまに でくのぼう呼ばわりも
できず、のぼう様と呼ばれていたわけですが。

まあ・・・それでも充分あからさまですよね(笑)


特異なのが、普通は陰でそう呼ばれることが多いと思うのですが、この人の
場合、面と向かって本名のように「のぼう様」と呼ばれ、ご本人も当然のよう
に返事したりしていること(^^ゞ

それも、家来はもちろん城下の百姓や、その子どもたちまでが心安だてに
そう呼んでいるのですね



そんな長親をじれったがりながらも面倒をみているというか、竹馬の友で
いるのが、家老の正木丹波

最高の武勲を持つ者だけに許される朱槍の持ち主であり、それでいて
落ち着いた理性の人でもある彼。

そんな丹波は、幼い日に寺の柿を盗んで怖い和尚から逃げる際にも、
トロい長親を助けていたそうですが(笑)

今もその関係性そのまま、当主のいとこを「長親!」と呼び捨てにし、
ときには「この馬鹿野郎」などと怒鳴ったりもしています(^◇^)


この頃の坂東武者といえば、相手が当主であろうと自分の考えはきちんと
述べて議論をするし、その器量を見限ったが最後、さっさと自家の手勢を
引き上げて去ってしまったりもするのですね。

信長や秀吉の家来たちのように、這いつくばって滅私奉公するなど思いも
よらない、自尊心の高い武者たちだったようです。


なので、忍城のおもだった武者たちは、卑怯な裏切りをして秀吉に内通する
と決めた当主・氏長を内心では良しとしていないのですが。

それもこれも時代の流れであり、無益ないくさをして民百姓を犠牲にしない
ためには仕方のないことだと、おのれに言いきかせているのですね。



そこへ、圧倒的な大軍を率いて三成がやってくるわけですが。

まずは話し合いの使者を送るということで、長束正家(なつか まさいえ)が
忍城に入るのですが。

この男、相手を見て態度を変えるような嫌な男で、実用第一といった感じの
質素なつくりの忍城を見てなめてかかり、終始 無礼な態度を取るのですね。


このとき、病に倒れていた城代のかわりに成田家代表として正家を迎えたの
がのぼう様こと長親。

いい気になって好き放題なことを言う正家を、いつもどおりの茫洋とした
まなざしで黙って見ていた長親ですが、当主の娘・甲斐姫を秀吉の側室と
して差し出すようにと言われたときに、初めて重い口を開きます。

「腹は決めておらなんだが、今決めた。戦いまする」


おおっ♪
それでこそ武士だよ、と私も思いましたが(笑)

そのすぐあと、驚いた丹波に襟首を引っ掴まれ、納戸まで引きずられて
いった長親(笑)

その有様を見て、さぞかし正家も驚いたことでしょうが(^O^)


納戸で丹波をはじめ おもだった家臣たちも含め皆で話し合った末、いくさを
することに決まるのですね。

まあ もともと皆は、内通を良しとはしていなかったですもんね。


それにしても。

何万もの大軍に対して、忍城は数千。

よくもまあ、戦うと決めたものでありますね。


しかも、いざいくさが始まると、機略を用いて終始 三成軍のうわてをいく
みごとな戦いぶり。


焦った三成は、とうとう最後の手ともいうべき水攻めを決行するのですが。

結果的にはうまくいったはずのその水攻めが、さらに三成を窮地に陥れる
ことになるのですね。



本城である小田原城が落ちたあとも もちこたえた忍城ですが。

結果的には降伏して開城となるわけではあるものの。

決して負けたわけではなく、その証拠に戦後の話し合いで、三成軍が城下の
田んぼに足場として埋め込んだ土俵を片付けていくように長親は要求し、
それを三成は当然のごとくのんでいます。

さらに、投降した百姓の男女が殺害されていたので、その犯人を捕まえて
処罰するよう要求した長親に、そんなことがあったのかと憤った三成は、
「どこの家中であっても探しだし、厳罰に処する」
と、約束するのですね。


忍城の面々はもちろん、三成方も、長束正家をのぞいて、出てくる武将たち
はみんな好漢ぞろい

なので、読後感も爽やかでありました(*^_^*)



最後に。

結局は秀吉の側室となる甲斐姫ですが。

この姫は“容色並ぶ者なし”といわれたほどの美人で、なおかつ武勇に
秀でていたとのこと


秀吉の側室となった後も、泣きの涙で暮らしたかというとどうもそうではなく、
その後起こった謀反で養母を殺された際には、自ら槍を取ってその謀反人の
首を打ち取ったとか。

さらに、秀吉の寵愛もなかなかに深かったようで、開城後、他家の預かり人
となった父・氏長のために、三万石の所領を勝ち取ったのだそう。


忍城開城の後、離散した成田家ですが、姫に至るまで皆がみごとな
生きざまを見せていて、そのことにとても感動しました。


「置かれた場所で咲きなさい」とかなんとかいうタイトルの本もありますが(笑)

ホントだなあ。

どんな窮地に陥っても、自尊心を持って真っ直ぐに事に当たれば、道も開けて
くるものなのだなあと思った次第です。


それにしても。

こんな面白い本を今まで読まずにいたなんて、まったくもって不覚で
ありました^^;



例によって長くなりましたが、最後までお付き合いいただき、ありがとう
ございました(*^_^*)



のぼうの城
小学館
和田 竜

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