王妃でも庶民でも、離婚はたいへんであります^^;





ずっと前から気になっていたこの本、こないだ偶然図書館で見つけました~

佐藤賢一 著 『王妃の離婚』


離婚経験者としては ちょっと気になるタイトルだし、国王夫妻の離婚となると
一大スキャンダルだから、さぞかし大騒ぎだっただろうなあとも思って、
興味を惹かれたんですよね。


それにしても、王さまといえば国の最高権力者なんだから、離婚したけりゃ
イギリス王みたいに 気に入らない王妃を闇から闇に葬ったって誰も
面と向かっては何も言えないでしょうに。

なんでまた、衆人環視の離婚裁判なんぞやったのか、疑問だったんですよね。


このお話に出てくる夫婦は、フランス王ルイ12世と その妻ジャンヌ・ド・
フランス


タイトルからいえば主人公は王妃ジャンヌ・ド・フランスになりそうですが、
そうではなく、彼女の弁護士のフランソワ・ベトゥーラスという49歳の男が
主人公となります。


この男、若い頃はパリ大学きっての優秀な学生で、学生たちの間では
有名な存在だったんですよね。

溌剌とした切れ者で、将来を嘱望されてもいたのですが。

ある事件をきっかけに大学から姿を消し、今はナントという片田舎の街で
地味な弁護士をしています。


王家の離婚裁判に対する興味から傍聴に現れたフランソワですが、そこで
偶然 大学の後輩に出会ったことから、彼の退屈で灰色の人生は一変する
ことになるのですね。


でも、この離婚裁判。

はるか後世に生きる庶民の私が考えたって、王さまが離婚したいと言い出し
たのなら、もうどうにもならないのは火を見るよりも明らかで。

それを承諾せずに裁判に持ち込んだところで、勝ち目はないと思われます。

実際、裁判関係者はみな王の権力を恐れて へつらう輩ばかりだし、王妃の
最初の弁護士にしたってそれは同じで、ラテン語で記された裁判記録すら
ちゃんと王妃に説明してはくれないうえに、闘う意思は皆無なんですよね。


それで、王が挙げた離婚理由というのが、ほかでもない妻ジャンヌの醜さ。

それゆえ夫婦であった長い年月、彼女とのあいだに心身の絆がまったく
なかったので、実際に夫婦であったとはいえない、という趣旨の申し立て
なのですね。


この時代、醜女であることは罪悪であるかのように扱われていたうえ、顔の
つくりがどうこうというよりも歩く姿が醜いのは最悪とされていたんですよね。

しかるに、被告席に座ったジャンヌは とても小柄なうえに足が悪いため、
歩くたびに肩が上下して、とても気の毒な様子。

れっきとした先王ルイ11世の王女であるはずのジャンヌは、いまや孤立無援
の よるべない境遇の女性となりはてていたのですね。

それでもジャンヌは離婚に同意せず、真っ向から闘う姿勢を示します。




その絶体絶命の王妃のために、フランソワが弁護をかって出ることになった
わけですが。

弁舌爽やかだった若い頃の面影を彷彿とさせながら、鋭く相手方に切り込ん
でいくフランソワ。

まずは、相手方のフランス王を故意に『ルイ・ドルレアン』と呼ぶところから
反撃は始まります。

ジャンヌがその名、ド・フランスが示すとおり由緒正しいフランスの王女である
のにくらべ、ルイ12世は王家の生まれではなくてもともとはオルレアン公
だったのですね。

王家の姫に対して格下の婿である、と暗に宣言したわけで。


庶民たちも、かよわい王女を法廷に引きずりだしておきながら自身は出廷も
せず のうのうとしているばかりか、妻の醜さを言い立てて離婚を突き付けて
いるルイ12世に対して、非難する気持ちは重々あるのですが。

そうはいっても、これはどうにもなるまいなと 諦めて傍観していたんですよね。

それが、颯爽と現れた一介の弁護士が原告側をギュウの目に遭わせている
のをみて、やんやの喝さいを浴びせ、裁判は一気に国中の話題をさらうことに
なるのですね。



ところで、このルイ12世という男。

ほんっとうに、どうにもならない卑劣漢ではあります。

だいたいが、妻が醜いから、なんていう離婚理由を挙げることだけでも
その器の小ささは知れようというものですが。

妻があくまでも裁判を諦めないと知るや、王とも思えぬ卑劣な手段を数々
講じてきたり。

それをフランソワがうまく切り抜け、またそのことが国民の耳目を集めたと
みるや、今度はなりふりかまわず刺客を送ってきたり。

裁判の行方を注視していた他の国もあきれ果てるほどに、卑劣で稚拙な
やりかたでゴリ押ししようとするんですよね。


さて。

ここでひとつ、大きな疑問を持った私。

夫がこんなしょーもないヤツだとわかったのなら、裁判に勝つことはまったく
意味のないことではないのか、と思ったんですよね。

それよりは、むしろ裁判は負けてやり・・・あるいは取り下げてしまって、財産
分与や領地の安堵など、今後の人生に焦点を当てて考えてみた方がよいの
ではないかな、と。


実際、フランソワもこれまでの弁護士としての経験から、このような裁判に
勝った妻が、そののち えてして不幸せになってしまうのを何度か見てきて
いるのですね。

どうあっても離婚しようと思うほど妻から心の離れている身勝手な夫を、
結婚生活に縛り付けておいたところで、改心するわけもなく。

それどころか、裁判で負けた悔しさから、妻に対してとんでもない仕返しを
することもあるわけで。

フランソワもその点が心配になり、王妃に訊いてみるのですが。

それでも王妃は、考えを変えないのですね。



こんなふうに、何があろうとも離婚に応じない妻というのがときどきいますが。

離婚を経験した私としては、そのへん、正直 理解ができなかったんですよね。

どっちがいいとか悪いとかの前に、破綻してしまっている結婚を無理に続けた
ところで百害あって一利なしなんじゃないかと思うし。

でも。

この年になって、自分以外のいろんな離婚騒動なども見るにつけ、ちょっと
考えも変わってきておりまして。

だって、離婚ですよ。

女性にとって、これはもう人生における、ちゃぶ台ひっくり返し状態なわけで。
(男性も同じかな笑)

これまでの人生を否定されたも同然で、これはもうパニックになりますよね。

それでも私は離婚を言い出した方なので、その点 覚悟はできておりましたが。

反対に言い出された方だと、ショックは大きいでしょうね。

これまで築き上げてきたものが一気に崩れて、人生が大きく方向転換するの
ですから。

今後のためにも、納得できるまで判を押さないというのもアリなのかな、と。

そこまでいかなくても、ある程度 自分のなかで納得できていないと、その後の
人生を生きていく力が湧いてこないでしょうしね。

とはいえ。

動機はあくまでも前向きであることが大切かと。

復讐心などにとらわれてしまっては、それこそ その後の人生を生きていく
力は湧いてきませんからね。


ということで。

話を元に戻します^^;


ネタバレになってしまうのでここには書きませんが、この裁判も、結局は
まあ順当だなと思われるところに落ち着くのですが。

結果はどうあれ、こんな大騒ぎをしてでも納得できるまで妥協しなかったから
こそ、ジャンヌ王妃は活路を見いだせたとも言えるのですね。


陳腐な言い方かもしれないけど、考え方はほんとうに人それぞれ。

他人にどう見えようとも、自分が納得できる生き方を探っていくしかないので
あるな、と思ったことでありました。


こんな重いテーマではありますが。

ラストは意外や意外、大団円

本当にホッとしました(笑)


最後の最後に、これまで孤独に敗残者の人生を生きてきたフランソワに、
大きなサプライズというか、今後の人生を明るく照らすような出来事が
待っているのですが。


パリ大学きっての秀才と言われ、王さま相手にすごい裁判をやってのけた
フランソワともあろうものが、最後までそのことに気が付かなかったのが
少々不思議でありました。

だって、私、けっこう最初のころから気づいてたし。

っていうか。

この本を読んだ女性なら、ほぼみんな気づくんじゃないのかなあ(笑)


すごい優秀な頭脳の持ち主で切れ者なのに、こういうところが抜けてるなんて。

面白いなあと思った私。

いいなあ、こういう男の人(*^_^*)


・・・って。

またまた、長くなってしまいましたが。

読み始めるととまらないくらい面白い本なので、興味を持たれた方はぜひ
読んでみてくださいませ。


最後までお付き合い下さり、ありがとうございました



王妃の離婚 (集英社文庫)
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