もめん随筆




群ようこさんのエッセイのなかに、学生のころの担任の先生が受け持ちの
クラスの生徒それぞれの性格に合う本を選んで勧めていたという話があって、
いい先生だなあと思って読んでいたのですが

その先生が群さんには、
「少し古い本だけど、きっとあなたの気に入ると思う」
とおっしゃって、『もめん随筆』を勧められたのだそう。

それを読んだとき、ぜひ私もこの本を読んでみたいものだと思って矢も楯も
たまらなくなって、図書館で予約を入れて取り寄せてもらいました(笑)


森田たま著 『もめん随筆』


図書館の司書の方が、古いものと最近改訂されたものとがありますが、
どちらがいいですか?と訊いてきたので、迷わず改訂版を選んだ私。

古いものはきっと旧仮名遣いだろうし、それだと読みづらいだろうと思った
からなのですが。
案に反して、改訂版も旧仮名遣いでありました

おまけに漢字も当用漢字にはないものがちらほら出てくるしで、最初は
読みづらくてとまどったのですが。

読んでいくうちに、漢字の読みは文章の前後で大体の見当がつくようになった
し(間違ってないという保証はないですが 笑)、旧仮名遣いも慣れてくると
奥床しさが感じられてきて、味わい深かったです(*^_^*)


著者は明治27年生まれ。
すごく昔の人のように思われますが。

没したのは昭和45年。

ごく最近まで生きておられた方なのですね。



まず最初に興味を惹かれたのは、著者が阪神間に長く住んでいたという
ところ。

北海道生まれで、その後東京に住んでおられたようですが。

結婚生活は阪神間で送っておられるようですね。


最初は関西弁がわからずにとまどったりもしたようで、東京からついてきた
女中さんなどは、本家から使いで来た使用人が何を言っているのか理解
できなくて、
“「あの方の仰有ることはまるで外国語のやうです」と云つてゐた。”
などという感じだったようですが^^;

暮らすうちに、温暖で住みやすい阪神間が気に入られたようで、ここを故郷
のように思われたのですが。


それって、私も同じなんですよね

阪神間にはまったく縁もゆかりもなかった私ですが、結婚以来こちらで暮らす
ようになって、いまでは生まれ故郷よりもここのほうに懐かしさと慕わしさを
覚えるほど。


ひと口に関西と言っても、大阪・神戸・京都・西宮は、それぞれに特色があって、
まったく違った雰囲気なんですよね。

そのなかでも芦屋・西宮を包括する阪神間は、関西弁も大阪よりはもう一段
柔らかく、人の気風も穏やかな気がします。

阪神間が舞台になっている小説『細雪』が、その雰囲気をよく表していますね。


自然にも恵まれていて、六甲山系に囲まれて緑も豊かだし、海も近いし、
気候も温暖。
本当にいいところだと思います(*^_^*)



さて。

肝心の本の内容ですが。


著者は上流階級というほどではないのかもしれませんが、それなりの おうち
の奥さまといったかんじで、家には使用人も数人置いて暮らしています。


それが、長兄が人に騙されたかなにかで財産を失い、お金の苦労もしたよう
ですね。

まだ年若い姪に“お金がないのは、首がないのも同じだっせ”などと言われた、
と書かれていました^^;


のちに文筆業で身を立ててからは、芥川龍之介をはじめとして、当時の
錚々たる文学者たちとのつきあいもあったようで、いろいろと興味深い
エピソードも披露されていました。

それらも とても面白かったのですが。


私が一番興味を惹かれたのは、著者の、明治生まれの女性とは思えない
ほどの考え方の自由さ。

昔の男尊女卑の教育に、それこそどっぷり浸かって育った世代だと思うの
ですが。

世の男性が、女・子どもに相談なんぞしたって仕方がないと言って、大事な
ことを妻のあずかりしらぬあいだに決めたりするのはどうかと思う、と書いて
いました。

昔の日本男性は、多かれ少なかれそんなふうだったんでしょうね(~_~;)


さらに著者はこうも言っています。

だからと言って、家族を引っ張っていく男性がすぐれた判断力の持ち主で
あればいいのだけど、そんな立派な男性にはめったにお目にかかったこと
がない。
盲目の人に手を引かれて歩いているも同然だったりする場合もある。


一刀両断ですね(^◇^)

当時、ここまで言える女性はなかなかいなかったんじゃないのかなあ。


そんな彼女でも、昨今 夫から手を上げられたことがない女性はいないと
思うが云々、などとも書いているんですよね。

そして、自分もご多分に漏れず、目の周りが青くなって腫れ上がったことが
ある、などとも。

でも彼女の夫は決して乱暴な人ではなく、それどころか当時には珍しいくらい
の優しい人であることが随所で感じられるくらいなのですが。

それくらい、夫の暴力はありふれたことだったんですね。

ちょっと驚きました。



この本、群さんのエッセイで知ることがなければ、きっと手に取ることもなかった
と思われますが。

とても読み応えのある、面白い本でした。

女性なら、多かれ少なかれ興味深く読めるんじゃないかなあ(*^_^*)


お勧めの一冊です。



もめん随筆 (中公文庫)
中央公論新社
森田 たま

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この記事へのコメント

2012年08月15日 23:20
昨日、ミミズ見て
徳富蘆花の『みみずのたはこと』
を読み直してみょうかなと思っているのですが
確かに、昔の本は読みにくいですね。
2012年08月15日 23:34
群さんも何かピンと来たんでしょうけど、群さんの先生もすごい方ですね。
人格と「本」格を踏まえて、紹介できるとは、、、
たいてい、自分の好きな本だけ押しつけるものですが。
その振る舞いもお見事ですね。
2012年08月16日 06:43
”金がないのは首がないのも同じだっせ”という部分は記憶があるから、むかし読んだことがあるかもしれないな~

人間は、けっこう固定観念や外からの情報におかされているところがあるから、あのころはこうだったと思い込んでいるところがありますよね。
明治の女は・・・戦国時代の女は・・・平安時代の女は・・・
けっこういまより自由奔放な女性もいたのではないでしょうかな~
キーブー
2012年08月16日 16:50
もうヘトヘトさん、こんにちは
徳富蘆花の本って、私は1冊も読んだことがありません。『みみずのたはこと』ですか、面白そうなタイトルですね
でも今は、『もめん随筆』の旧仮名遣いを読み切ったばかりで、息が切れております(笑)
次に旧仮名遣いの本を読めるようになるまでは、今しばらくかかりそう。。。
キーブー
2012年08月16日 16:53
たかじいさん、こんにちは
>たいてい、自分の好きな本だけ押しつけるものですが。
そうですよね。クラス全員にお勧め本を紹介できるのって、あらゆる分野の本を読んでるってことですもんね。
今の先生でそんなことをしてる人がいるのかなあ。大津のいじめ事件などを見るにつけ、先生への信頼感が昔より薄れているような気がします。
キーブー
2012年08月16日 16:59
ねこのひげさん、こんにちは
”金がないのは首がないのも同じだっせ”って、すごい言葉ですよね。それをうら若い娘がさらっと年長の叔母に言うって・・・今じゃちょっと考えられないなあ^^;
なるほど。その時代の体制的な縛りはあったにしても、ひとりひとりを見ていくと、わりに自由闊達に生きていたのかもしれませんね、女性でも。
でも、その著者にしても、夫からのDVをありふれたこととしてとらえているんですよね。これはホント驚きました(~_~;)
2012年08月16日 17:58
昔の女性の、潔い諦め感は強いと感じます。惰性で諦めたのではなく、何て言うの?スパッと「だって仕方無いでしょ?」と言い切れる凄さというか。昔の女性は強くて潔くて豪快ですよね。明治に女性が物書きになるのも男性目線の世間ではちょっと異色だったろうし、そうなると女性としての主張を出せる人だろうから当時には珍しいタイプだったでしょうね。気の強い女とか言われてたかも(^^)
ひまわり
2012年08月16日 19:18
旧仮名遣いは読みにくいですよね。
中勘助の「銀の匙」でそう思いました。
綺麗な文章なんですが苦労しました。
明治の男女は強い印象がありますね。
数年前の統計では男の3人に1人がDV
だとか?
ほんとかどうかは疑問ですが…。

そう言えば大阪と京都の言葉の違いは
わかりますが
神戸というとちょっとわかりません
でした^^;




2012年08月16日 20:09
この本は読んだことある! そこまでの記憶 それが全て 内容?忘れた
2012年08月17日 08:21
>昨今 夫から手を上げられたことがない女性はいないと思うが云々、

夢で怪物や暴漢と闘っていて、殴ったら奥さん(meimeiさん)にパンチをということが何回かあります。(~o~;
夏目漱石をいくつかまた読み返そうかな。
キーブー
2012年08月17日 18:31
miyoさん、こんにちは
周りの人たちから、書いたものに対してもいろいろ言われたらしいですね。女性がちょっと人より抜きんでたことをするとそれだけでうるさかった時代ですもんね(~_~;)
お金に困ったときの話なども、女性の愚痴といったかんじではなく、まるで男性の目線のようなかんじで書かれていました。腹が据わってますよね。
そんな彼女でも、若いころは自殺未遂事件を起こしたりして生き方に迷ったこともあったようです。それらを踏まえて、また強くなったということなんでしょうね。
キーブー
2012年08月17日 18:36
ひまわりさん、こんにちは
中勘助の「銀の匙」、私も気になっていたんですよね。平積みにされた文庫本を手に取ったりもしたのですが、手持ちの本を読んでからと思い、その後はいつもどおり忘却の彼方(笑)
統計で3人に1人と出たのなら、実際はもっと多かったのかも。ほとんどの男性とみて間違いない感じかなあ(~_~;)

神戸はやっぱりちょっと異国情緒といったものが感じられますよね
言葉も、「・・・してる」を「・・・しとう」などと言ったりします。
キーブー
2012年08月17日 18:38
seiziさん、こんにちは
内容、忘れちゃいますよねえ(^^ゞ
私も、そんな本がたくさんあります。
っていうか、ほとんどそうかも。読んですぐじゃないと記事にも書けないですね(^_^;)
キーブー
2012年08月17日 18:42
moumoupapaさん、こんにちは
連投コメント、ありがとうございます(*^_^*)
ありゃりゃ、寝ぼけてたんですね~(^_^;)
夏のこの時期って、明治の文豪の重厚な文章に触れてみたくなりますよね。
学生の頃に戻ったような気分になるし♪

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